にんじんのきんぴらとカセットテープ。

昨日食べた人参のきんぴらが美味しかったので、今日また作ろうと、夕方台所に立ちました。


仕事部屋から空のカセットテープが羽音のようなうなりをあげて回っています。


さっきまでかかっていたのは


『そして僕は途方に暮れる』。


一番初めにこれを聴いたときには「あぁ、新しいジェネレーションが来た」と思いました。糸井重里の人を突き放すようなコピー。乾いたボーカル。それでいて身勝手な男の感傷。


大人になり、この歌詞の意味の深さを知ることになりました。



女性は捨てたものは決して振り返らない。でも男性は終わったものと、その事柄をいつまでもリピートして、オートリバースのカセットのように終わらせない。『途方に暮れる自分』をずっと見つめ続けている。


私も初めて買ってもらった赤い「ラブコール」(パナソニック製)というダブルデッキで、ラジオのエアチェックに夢中になりました。当時、貸しレコード屋は身近ではなかったのです。



民放のヤングリクエスト、ブンブンリクエスト(賞品にほろほろスプーン、というのがあった。いまだに詳細は不明)(占いばやりの時代だったからホロスコープつながりだったのだろうか)。お目当ての曲がかかりそうなときは、RECボタンを押したまま一時停止し、じっと待っていた。ただひたすら赤いカセットデッキを見つめてました。


今、ラブコールから数えて五代目のONKYOのカセットデッキは、CDやMDデッキの勢いに押されながらも、私の大事なパートナーとして真中にいます。


二百を超えるカセットテープも、ときどきくぐもったりしながら、いまだに何十年も前の音を伝えてくれます。


カセットのいいところは、無音になるところがあることだ。その無音の間に、今聴いた曲の余韻にひたったり、ゆるやかな回転速度を感じることができる。この速度はパソコンにはない速度だ。


とてもゆったりしているが、決して焦っていない。この無音の時間も、自分の仕事だと誇りを持っているかのように働くカセットデッキ。


その音を聴きながら 今、きんぴらを作っている私の心は、とてもしんとしています。
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昔からのカセットテープを今も聴かれるのは素敵ですね。
プロフィール

コキ

Author:コキ
こきあい りん(小樹藍りん)。漫画家。
白泉社「別冊花とゆめ」にて商業誌デビュー。
その後秋田書店などを経て現在は集英社クリエイティブ「オフィスユー」で『ニセモノ彼女の本当の恋』を連載中。
他白泉社「LoveSilky」で読切描いてます。

同人活動は主に『ひきこもり修道女日記』というどたばた神様コメディ読切シリーズをコミティアで刊行中。

『ひきこもり修道女日記総集編上下』をCOMICZINで通販中。
角川BOOK☆WALKERからは電子配信中。
各話バラでダウンロード販売をDLsite.comでおこなっております。

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